普段こういう講演会的なものはあまり参加しないのだけれど、主催が友人(たち)ということと、講師が面白そうということもあって参加してみた。
(講演会の詳細はこちら:首都大に、オリエンタルランド前社長来る。)
コンテンツは以下のような感じ:
【第一部】●講演:「東京ディズニーリゾート 成功の鍵」●講師:・福島祥郎氏(ふくしま よしろう)株式会社オリエンタルランド特別顧問(前社長)(略歴)1969年中央大学経済学部卒業後、株式会社オリエンタルランドに入社。広報室長を経て95年取締役就任。その後、経営企画室長、営業本部長、運営本部長、テーマパーク統括本部長を歴任し、2005年代表取締役社長就任。2009年に代表取締役社長を退任した。【第二部】●対談:「社会人として活躍するためには」●講師:・福島祥郎氏・田尻邦夫氏(NPO法人新社会人養成塾Booster代表理事)(略歴)伊藤忠商事入社後、主に繊維を担当。ロンドン駐在2回、通算11年。その後経営担当、CIOなどを歴任。その後デサントの社長を5年務める。いろいろな業界に知己が多い。'11年新卒就活でも多くの大学生を指南し、見事内定獲得をした大学生多数。新社会人養成塾BOOSTER代表。●学生コーディネーター:西村創一郎(首都大学東京都市教養学部法学系4年)【懇親会】
要点というか、話のポイントは以下のような感じだった。
【第一部:講演】
●パーク成功の鍵
・成功の鍵と言ってもたいしたことはない。一番はミッキーマウスの存在。ゴミが落ちていれば拾って綺麗にする。人に接するのに優しい言葉をかける。我々が普段忘れているが当たり前のことを確実にやっている。これが人々に受けているようだ。
●41年間オリエンタルランドにいて、社長をやって、いま振り返って思うこと
・安定ばかり目指すと、それに不安定が伴う。
・一番のポイントは健康。
・チャンスをつくる。一番は人と人との出会い。幅広い出会いがあるが、その出会いの時に、自分の信頼を築いていく。
・下から上を見るのは簡単だが、上から下を見るのは難しい。上司っていうのは部下のことはわからない。ちょっと試してみるようなことをして、響くようなら「使ってみるか」となる。
・運命は努力によって変えられる。
・欲を出すことは必要だが、私欲、自分中心の考え方はダメだ。
・仕事そのものはそんなに難しくない。壁となるのは人。上司、取引先、役所とか。
・精神力がだいじ。
・油断は失敗の素。
・波に乗るのは良いが、調子には乗らない。
・師を持て。自分の大きさ・器なんてたいしたことはない。自分のライバルとなるような人から教えを請え。
・先生がいないときは本を読め。その中でも中国の古典。倫理とか道徳。人間が曲がらないように。
・アイディアはゼロから出てこない。いくつか組み合わせる。
・ストレス。ガス抜き。自分の一番やすらぐもの、趣味を早く見つけた方がいい。
●これからの人生でこういうことを是非学んで欲しいということ
・見える価値と見えない価値。「感覚」いま儲かっている企業は五感に関連させている。「生理」「心理」。他のテーマパークはあんまりこういうことに力を入れない。
・つぶれている会社はみんな私欲のためにやっている。
・学校では知識ばっかり教えてくれる。会社に入ってからは、考え方や価値観を磨いていかないと。
・知識、見識、胆識。
・WHOの健康の定義「健康とは、身体的(physical)、精神的(mental)、霊的(spiritual)および社会的(social)に完全に良好な動的状態であり、単に病気または虚弱が存在しないことではない」:霊的!今後大事!
●質疑応答
Q:
もし福島さんが大学3年生だったら具体的にはどういう行動に移すか。
A:
就職厳しい。厳しさはいつの時代も同じ。その厳しさは所与のものとして、自分なりにどう動くかを考えていった方がいい。
自分でプランを作って、それ通りに行動するのは難しい。多分出来ない。イチローは優秀なバッターだが打率は3割。一般の人は、自分が立てたプランの2割くらい出来ればいい。勉強したものがいきなり会社で役立つなんてことはない。いろんなことを経験していくなかで見えてくる。あんまりこだわらなくていい。
Q:
「特定の手段で不特定の人々に幸せを提供する。相手の立場に立つことは大事」とおっしゃっていたが、自分が大事だと思うことと、相手にとって必要なことは違う。そこを見抜く勘所はどのように鍛えるか?
A:
相手の気持ちに立つには自分がいろいろ体験してみないとわからない。
自分がされたら嫌だなと思ったことはしない。特に異質な人に会ってみることも大事。
まずは自分がいろんな体験をして、相手のことを思うことが大事。
自分で仕掛けていって、反応をみて、修正していけばいい。
なかなか難しい。自分が幅広くいろんなことを学んでいくことが必要。
【第二部:対談】
●入社してすぐのころの話
福島氏:
まずは自分の会社のことを覚える。塗り絵をして覚えた。数字も全部頭に入れた。この数字は未だに頭の中に残っている。
理屈ではなく、楽しみながらやったことはプラスになって覚えている。
●失敗を乗り越えた経験や、武勇伝
福島氏:
若い頃はただ経験というか、すべてみることやること新しかった。新鮮だった。
ほとんど遊び狂っていた。自分の感性というか、まったく違うものをくみ取るように吸収していった。
田尻氏:
人生最初の失敗は、自分についてくれたアシスタントが優秀で、上司も優秀な男性で、毎晩遊びに行っていたこと。
●入社を決めたポイント
福島氏:
学生時代勉強していなかった。優は3つしかなく、可ばっかり。可山優三(かやまゆうぞう)なんて言ってね。
●学生の「大手志向」についてはどう考えるか?
福島氏:
非常に複雑だ。
自分は就職するとき、成績が悪かったので大きな所に入るより、小さいところの方が好き勝手出来るなと思って入った。
大手は採用試験が始まる前にオリエンタルランドに内定していたので受けなかった。
田尻氏:
5年とか10年とかの感覚で言ったら大手に入った方がいいかも。
ただ、いま伸びている会社は80年代におこったもの。君たちの20年30年を考えるなら、そういう会社もいいかも。
いろいろある。
大手だとかそういうことは考えずに、自分のやりたいことをやれ
●自分のやりたいこともなかなか見つからない人もいる。どうしたらいいか。
福島氏:
決まることすら難しい。自分のやりたいことはやらせてもらえない。選択はせばまっていく。
そういう厳しい中に入った方がいい。みなさんは非常に恵まれた環境の中で育ってきた。安定したレールの上を歩いてきた。
この先はどうなるのか。たとえば資本主義も、疑われ始めている。人間が欲を追い求めたためにみんなおかしくなってきている。
どういう世の中になっていくのか、考えたって分からない。勘だ。勘を鍛えるためには素直になること。
田尻氏:
難しい質問だ。
良い悪いは別。いまから世の中はどうなっていくんだ、という考え方が一つ。
親切な会社、目線が低い会社が必要になってくるのではないか。これまでの企業は上から見ていた。
我々が過ごしてきたサラリーマン生活と君たちのサラリーマン生活の違いは、グローバル。
自分も100くらいの国に行ったが、これは決してグローバルということではない。すべて日本を拠点にしていた。これからはどこが拠点ということがない時代。
入った会社は7割くらいの人が好きになる、と言われている。あんまりがちがちにしない、こだわりすぎないほうが大事。
どっか入れるところがあるというのは何かの縁。
●出世欲が無い若者が増えていると言われるが、出世は欲がないと出来ないのかどうか。
福島氏:
出世欲はあった方がいいが、露骨に出すと嫌な感じになる。
部長になりたい、とかはなかったが、役員が車に乗っているのをみて「俺も絶対車に乗ってやる」と思っていた。そのくらいのぼんやりさで考えた方がいい。
田尻氏:
出世はした方がいい、というのは確か。ポジションが変わると見えるものが違う。
どんな賢い課長もアホな部長は絶対越えられない。課長に入ってくる情報と部長に入ってくる情報、部長に入ってくる情報と役員に入ってくる情報、これらは倍ではなく累乗で違ってくる。
結果論として、出世した方が自分の仕事はやりやすくなる。
出世を目的に頑張るのはおかしい。ちゃんとやっていたら誰かが見ている。
出世と仕事が出来ることは違う。出世は運と上司の気まぐれが入ってくる。
●最近社会起業とかソーシャルビジネスみたいな言葉が21世紀の新潮流としてでてきたがどう思うか。
田尻氏:
企業の経営者は目線を低くしなければいけない。よくいう社会に貢献する、みたいなことだが、目線を低くしなければいけない。企業は社会に生かされている。採用人員を増やすことがいちばん社会に貢献することだ。
内定率はあんまり考えないほうがいい。サンプリングの小さな数字。地方の、聞いたこともないような大学の数字も入れている。
そういうことにあんまりこだわらずにやれ。「地方に行くのはいやだ」とか言って避けているのかもしれないが、入ろうと思えばいろんな会社がある。リクルートに踊らされるな。
●いまの自分を作っているチャンスはどんなものだったか。
福島氏:
広報をやったとき。最初人事をやっていて、採用担当だった。悪い記事が出て、内定取り消しだとか。企業が取り消すんじゃなくて応募者が取り消していた。社長に言った。「失敗してもいいからお前がやれ」と言われてやったが、案の定失敗。社長に「高い授業料だったな」と言われたのがきっかけで、「やってやる」となった。何かがあったら辞める覚悟を持って、上にもばんばん意見を出した。
覚悟を決めて行動する、こういうことが多かった。
田尻氏:
転機みたいなものはないかも。考え方の幅が拡がったのは若いとき、28歳の頃にイギリスに駐在したとき。
仕事の面でもいろいろ勉強になった。イギリスというのは、いわゆる英国病とか大英帝国の没落だとか言われるが、イギリスで産業革命が始まったときのこととか、イギリス人の考え方を勉強した。
イギリス人が一番言われて嫌な言葉は「あんたはアンフェアだ」。フェアネスということをすごく大事にしていた。勉強になった。
●新社会人に求められること、期待されること。
福島氏:
あんまりない。わかんない。
学校で学んだことを活かせる事なんてほとんどない。3年ぐらいじっと我慢していろんな事を覚える。
会社側はみなさんの長所を早く見つけたいと思っている。長所にあった仕事をさせてあげることがお互いの利益だと思っている。
最初のうちはあまり欲張らずに、隣の庭ばかりみないで、目先のことをしっかりやっていくことが大事だ。
仕事以外に集まったときにめんどくさいことがある。こういうのは買って出る。いろいろ目立つ。目立ちすぎるとマークされる。ほどほどに。人の嫌がることを自分がすすんでやるといい。
田尻氏:
私のblogを読んでくれたら書いてある。福島さんとまったく同じ事も言っている。
3年なんてすぐだが、とくに1年目は言われた仕事は、へりくつを言わず、全部買ってやれ。
ただ、やり終わったあとに、「この仕事はどう変えればいいか」「本当にこの仕事はいるのか」をちょっとでいいから考えろ。
あとは、大きな数字をつかむ訓練をしたらいい。コンサートに行ったら、これくらいの人が入っているからこれくらいの収入で、電気代がいくらで・・・ということをパパパッと計算する訓練はしたらいい。
嫌がる仕事をやれ、というのは新人だけじゃなくてサラリーマン生活ずっと。誰かが見ている。小さな事も、誰かが見ている。これがどこかで出てくるし、見られていることが励みにもなる。
●質疑応答
Q:
「潔癖であること、誠実であること、美意識、フェアネス」と言う言葉が出たが、人の上に立つまでに、汚いこと、自分の志に反することをせざるを得ない状況があったかと思うが、やったのか、やったとしたらどんなことをしたのか。
田尻氏:
私はやっていない。部下にも言ってきたが、会社と個人があったら個人を取れ。自分がどうしても決断しなければならないときは、会社を売って自分を立てろ。これをしっかりしておかないと、「会社のため」と思って法を犯してしまうケースも出てくる。絶対法を曲げるな。上司が強要してきた場合は内部告発をしろ。これはいまはどこの会社も徹底している。
これを実行しておかないと、会社がつぶれる可能性がある。
どんなことがあっても法に触れるようなことはしてはいけない。
福島氏:
倫理、一昔前はアバウトだった。これからは、正しい道を進まないとおかしい。汚いことをしなきゃいけない会社は生きていけない。だから大丈夫。
Q:
世界の中で集客力を上げるために必要なことは?
福島氏:
入場者数年間2500万人くらいでほとんどが日本の人。海外が数パーセント。ほとんどが香港、台湾、中国。中国が増えてきている。上海にディズニーランドが出来る。いまは香港にもある。全く同じではなく、ちょっと違うものが出来る。
世界のパークの中で、日本がいちばんうまく行っている。日本人のDNAというか、そういうものがある。商品開発にしてもアトラクション開発にしてもメンテナンスにしても。新しいものをどんどん投入してくるとか。同じ物をつくっても日本人がやるとまったく別のものになる。
Q:
学生にどのような能力や考え方が必要なのか。企業からみてどういう学生が魅力的なのか。
福島氏:
もし自分が採用担当だったら。自立型というか、自分で使命を持って動ける人。情と意と知。三拍子揃った人はいないが、自分を見せるといい。
採用する方も素質なんてわからない。ややくじ引きみたいなものだ。なんとか欠点を見つけ出してはねていく作業になっている。的確な人材、採用は難しい。出来るだけ自分をはっきり表していくことが大事。自然体がいいよ。
田尻氏:
言葉で表せない何かがある。きっとこの会場で採用活動をしたら、私も福島さんも最後まで残すのは同じ人だ。
心に残るもの、訴えるものがなにかある。
つくられたものはわかる。就活本はよくない。
かといってあんまりシンプルだと残らない。心に残るSomethingを。その人のバックグラウンド。どれだけ勉強したか、どれだけ人の面倒をみたか、おじいさんとおばあさんとの交流はどうだったか、それが面接の最後に出る。どれだけ世界に関心を持っているか、ちょっと話したらすぐわかる。
1つは勉強。これから世界を見ていく、その基礎を作る。
西村:
自分の経験から1つアドバイスをすると、いろんな社会人にあって、自分の話をして、ウケた話をひたすら掘り下げるといいですよ。
Q:
「80%の人間が人生を後悔しながら死んでいく、そのときどきの自分のやりたいことをやっていったほうがいい」という話を聞いたことがあるが、客観的に見て「成功」されているお二人はどう考えるか。
田尻氏:
後悔で一杯。もっとたくさんの恋をすればよかった。いまはもう無理。もっともっと恋をしたかった。
後悔はそりゃいっぱいある。しかし、朝起きて、「会社に行きたくない」と思う日は1日もなかった。早く会社に行きたいと思うことばかり。
これは誰も言わない内緒のことだけれど、会社の仕事は、学校の面白さなんかの何十倍も面白い。しかも金を出してくれる。それは面白くないはずがない、と思って仕事をすればだいぶ面白い。
病気をしたこともない。夜風邪を引くと朝には治っていた。ストレスがなかった。朝から晩まで会社の仕事のことを考えていたから。
福島氏:
私も会社や仕事がいやだなとおもったことは無い。遊びと一緒になっていた。
早朝ゴルフをしてから会社に行ったこともあった。有給休暇なんかほとんど使わない。前向きに仕事に取り組んできた。
いま少し楽になって、家族に歓迎されている。会社がいやだとかそういうことは無かった。
嫌だと思うと自分が苦しくなっちゃう。
●最後にメッセージをお願いします。
福島氏:
自分のことでいっぱいだと思うが、いま日本という国がだいぶおかしくなっている。日本の国民というか。経済面・生活面ではよくなっているが、精神的にダメになってきている。このままだと会社もダメになるし、アジアの国々がいろんなことをやっているなかで、我々が立ち上がらないと、子供達に申し訳ない。いまやるべき事は、自分だけじゃなくて、世の中を良くしようという大きなビジョンを持って動くこと。
地球の人口はいま68億人。やがて90億人。地球には定員がある。自分の生き方とか考え方を変えていこうとする人は少ない。エネルギーをそちらに向けて頑張って。
田尻氏:
回り道をしなさい。一直線に、挫折無しに来ている人生じゃないかと思うが、是非回り道をされたらどうか。留学、ボランティア、そういうことを会社は阻害要因にはしない。芝居のグループに入って1年ぐらい休学するのもいい。これがグローバル時代に大事になってくる。
自分の好きなことを、大学時代に、少し金を掛けてでもいいから伸ばしておくといい。
以下、個人的な雑感。
・「オリエンタルランドの前社長が来る」ということでわざわざ北海道から来ていた学生がいた。スカイメイトを利用して東京に来て、何日かいて、就活をして帰るという。東京の学生が地方の企業を受ける上でのコストはあまり感じられないが、地方の学生が東京やその他の地方の企業を受ける上でのコストは甚大。この格差はなんとか是正できないものか。
・「今後はスピリチュアルなものが重要になってくる」というお話は面白かった。情緒的な価値の重要性を指摘されていた。よく言われる「モノ消費からコト消費へ」という話に通じるが、五感に訴えかけるモノ・サービスを提供していかなければならない。
・「健康が大事」「病気になったことがない」というお話も面白かった。病は気からなので気力を充実させる、プラス思考で考える、みたいなことが大事、というお話は結構重要なポイントだと思う。
・イベント自体のオペレーションや運営などが素晴らしかった。BOOSTERと関係者の皆さん、良い会をありがとうございました。
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